Raspberry Piのラインナップは、メモリ価格の高騰により2025年12月以降の価格体系が大きく変わりました。本稿では2026年9月20日時点のスペックと価格をもとに、モデル選定の基準を整理します。
結論として、「Pi 5を選んでおけば間違いない」という従来の判断基準は成立しなくなっています。原因はメモリ容量に比例した値上げ幅の拡大であり、選定基準は「処理性能」から「必要メモリ容量とコストのバランス」に移っています。
価格について
本稿の価格は2026年9月20日にスイッチサイエンスで確認した税込価格です。Raspberry Pi製品は価格・在庫の変動が大きいため、購入前に販売ページで最新の数値を確認してください。
用途別の選定基準
まず結論を一覧にします。
| 用途 | 推奨モデル | 価格(税込) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 最小コストで動作検証 | Pi 5(1GB) Pi 4(2GB) | 9,900円 11,880円 | 最新世代を1万円弱で入手できます。Pi 4は情報量で優位です |
| 学習、Pi-hole、軽量サーバー | Pi 4(2~4GB) | 11,880~20,900円 | 発熱が少なく、常時稼働時の安定性で優位です |
| デスクトップ代替 | Pi 400 | 14,520円 | キーボード一体型です。電源・マウス・ディスプレイは別途調達が必要です。 |
| 高負荷処理、SSD、AI推論 | Pi 5(8GB) | 36,300円 | PCleに対応しています。16GB(62,590円)はメモリ使用量を確認してから検討します |
| 省電力、小型、常時稼働 | Zero 2 W | 3,520円 | この用途に代替はありません。確認時点では在庫切れです |
| Linux不要、組み込み制御 | Pico 2 | 1,100円 | マイコンボードです。Piシリーズとはアーキテクチャが異なります |
Pi 5の2GB(14,300円)と4GB(22,990円)、Pi 4の1GB(7,920円)は確認時点で在庫切れでした。在庫状況については「買う前のチェックポイント」で後述します。
価格体系の変化の背景
直接の原因は、Pi 4とPi 5に使われるLPDDR4メモリの調達コストです。Raspberyy Pi社は、このメモリ価格が過去1年で7倍になったと公式に説明しています。AI向けインフラの拡大により、メモリの製造能力が需要に対して逼迫していることが背景にあります。
この結果、メモリ搭載量の多いモデルを中心に、2025年12月・2026年2月・2026年4月と3回の値上げが実施されました。16GB版Pi 5の価格推移(米ドル)は次のとおりです。
| 時期 | 16GB版Pi 5の価格 |
|---|---|
| 発売時 | 120ドル |
| 2025年12月 | 145ドル |
| 2026年2月 | 205ドル |
| 2026年4月 | 約305ドル |
値上げの対象外となっているモデル
一方、次のモデルは価格が据え置かれています。
- Pi 400(4GB):60ドルで据え置き
- Pi 4とPi 5の1GB・2GB版:35~65ドルの範囲で据え置き
- Zero、Pi 3などの旧世代」LPDDR2メモリの在庫が豊富なため、値上げの予定はありません
Raspberry Pi社は「必要以上のメモリを積まず、用途にあった容量を選んでほしい」と公式にコメントしており、2026年4月にはその方針に沿う形で3GB版Pi 4(83.75ドル)が追加されました。同社はメモリ価格が落ち着けば値上げを撤回する方針を示していますが、時期は明言されていません。
国内価格(Pi 5・Pi 4)
日本国内の価格は次のとおりです(スイッチサイエンス、2026年9月20日確認、税込)。同一世代内でもメモリ容量差による価格差は大きくなっています。
| メモリ | Pi 5 | Pi 4 |
|---|---|---|
| 1GB | 9,900円 | 7,920円(売り切れ) |
| 2GB | 14,300円(売り切れ) | 11,880円 |
| 3GB | – | 17,820円 |
| 4GB | 22,900円(売り切れ) | 20,900円 |
| 8GB | 36,300円 | 34,210円 |
| 16GB | 62,590円 | – |
Pi 5内では1GBと16GBで価格が6倍以上開きます。一方、8GB構成ではPi 4とPi 5の価格差は約2,000円しかありません。この価格帯では、処理性能で優位なPi 5を選ぶ根拠が明確にあります。
メモリ容量の判断基準
| メモリ | 想定用途 |
|---|---|
| 1GB | ヘッドレス運用(Pi-holeなどの軽量サーバー、センサー制御、CLIベースの学習) |
| 2~4GB | デスクトップ環境の利用、ブラウザ実行、複数サービスの同時稼働 |
| 8GB以上 | 複数の重量級サービスの並行稼働、コンテナ多用、AI推論の検証 |
用途別の技術的な検討
学習・入門用途
Pi 4(2GB、11,880円)とPi 5(1GB、9,900円)が実用的な選択肢です。Pi 4は発売から年数が経過しており、既知の問題への対処法や解説記事の蓄積が豊富です。Pi 5の1GBは、最新のRP1コントローラーやPCleバスを含むアーキテクチャを、最小コストで検証できます。
Pi-hole・自宅サーバー用途
常時稼働を前提とする用途では、Pi 4が発熱面で有利です。長時間稼働時の熱設計マージンが確保しやすく、追加の冷却装置なしでも安定動作が見込めます。メモリは1~4GBの範囲で足りるケースが大半です。
デスクトップ代替用途
Pi 400(14,520円)はキーボードとコンピュータが一体化されており、追加のケース調達が不要という利点があります。電源、マウス、ディスプレイ、記録媒体は別途調達が必要です。より高い処理能力とストレージ容量を求める場合は、16GBメモリと256GBのSSDを内蔵したPi 500+が選択肢になりますが、値上げ幅が大きいため事前に価格を確認する必要があります。
高負荷処理・SSD・AI推論用途
Pi 5はPi 4比で処理性能が2~3倍とされ、PCle 2.0に対応しています。別売りHAT経由でM.2 SSDを接続できるため、I/O性能を要する用途に適します。AI推論用途には、Pi 5用の「AI HAT+」(13TOPS版15,840円、26TOPS版24,860円)が用意されています。メモリ使用量の実測前に高メモリ版を選ぶ根拠は薄く、まず8GB(36,300円)で検証するのが合理的です。
小型・省電力・常時稼働用途
Zero 2 Wは65×30mmの基板に、1GHz駆動の4コアCPUと512MBメモリを搭載しています。この基板サイズと消費電力の条件を満たす代替モデルは、現行ラインナップにはありません。価格は3,520円ですが確認時点で在庫切れであり、販売店は2026年3月時点で供給不安を理由に購入数を制限しています。メモリ制約により、デスクトップ用途には不向きです。
Linux非搭載・組み込み制御用途
Pico 2(1,100円)は、Raspberry Piシリーズとは別系統のマイコンボードです。Linuxは動作せず、C/C++またはMicroPythonでファームウェアを直接記述します。センサーやモーターのリアルタイム制御に適します。
本体以外に必要なコスト
- 電源:Pi 5は5V/5A、Pi 4は5V/3Aが必要です
- 冷却・ケース:Pi 5用アクティブクーラーは1,100円、公式ケースは2,200円です。Pi 4用ケースの多くはPi 5では流用できません
- 記録媒体:microSDカード、またはPi 5ではSSDを用意します
- 映像出力:Pi 5はmicro HDMI接続です
世代ごとの技術的変遷
ラインナップの構成を理解するには、世代ごとの技術的な変化を押さえておく必要があります。
本流(Model B系)の変遷
- 2012年 Pi 1:教育目的の低価格コンピュータとして登場しました。ケンブリッジ大学の入学者のプログラミングスキル低下への問題意識が開発の起点になっています。
- 2015年 Pi 2:CPUがクアッドコア化しました。
- 2016年 Pi 3:無線LANとBluetoothをオンボード化しました。
- 2018年 Pi 3B+:有線LANがギガビット対応、無線LANがデュアルバンド化しました。ただし有線の実効速度はUSBバスの帯域制約により約300Mbpsにとどまります。
- 2019年 Pi 4:USB 3.0、帯域制約のないギガビットLAN、デュアル4K出力、USB-C給電に対応しました。
- 2023年 Pi 5:処理性能がPi 4比2~3倍に向上しました。PCle、電源ボタン、RTCを追加しています。
- 2025年末~:メモリ搭載量の多いモデルの値上げが続く一方、1GB版Pi 5(45ドル)や3GB版Pi 4など、低メモリ構成のSKUが追加されました。
用途別に分岐したライン
- Zero系(2015年~):小型フォームファクタのラインです。2021年発表のZero 2 Wでマルチスレッド性能が旧Zero比5倍に向上しました。
- 一体型(2020年~):Pi 400を起点に、Pi 500、Pi 500+へと展開しています。500+は16GBメモリと256GB SSDを内蔵する上位構成です。
- Compute Module系:機器組み込み向けのモジュール型です。単体では動作せず、I/Oボードとの組み合わせが前提になります。
- Pico系(2021年~):自社開発マイコンRP2040/RP2350を搭載する、Linux非対応のラインです。
次世代のPi 6については、公式エンジニアの発言をもとにした報道で、早くても2028年初頭とされています。それまでPi 5がフラッグシップの位置づけを維持する見込みであり、現時点での購入が短期間で陳腐化するリスクは低いといえます。
系統別スペック比較
| 系統 | スペック | 適した用途 | 制約事項 |
|---|---|---|---|
| Pi 5 | Cortex-A76 4コア(2.4GHz)、PCle、電源ボタン、RTC、デュアル4K出力 | 高処理性能、SSD運用、AI推論 | 5V/5A電源と冷却が実質必須です。高メモリ構成は高額です |
| Pi 4 | Cortex-A72 4コア、USB3.0、デュアルmicro HDMI。発熱・情報量で優位 | 学習、Pi-hole、軽量サーバー、レトロゲームエミュレーション | 処理性能はPi 5に劣ります |
| Pi 3系 | 旧世代。値上げ対象外。Pi 3Bは年間出荷数約100万台を維持 | 軽量用途 | スイッチサイエンスでは3B+が販売終了、3A+が売り切れです。新規購入はPi 4以降を推奨します |
| Zero系 | 65×30mmの小型基板。Zero 2 Wは4コア(1GHz)、512MBメモリ、無線LAN内臓 | 小型機器、IoT、常時稼働 | メモリ制約によりデスクトップ世戸には使えません。在庫が不安定です |
| 一体型(400/500系) | キーボード一体型。Pi 400は4GBで最安、500+は16GB+SSD内臓 | デスクトップ代替、教育用途 | 500系は値上げ幅が大きく、購入前の価格確認が必須です |
| Compute Module | 組み込み向け基板モジュール | 製品への組み込み | 単体動作は不可です。I/Oボードが別途必要で個人利用には不向きです |
| Pico系 | マイコンボード。C/C++・MicroPython対応 | 電子工作、センサー・モーター制御 | Linux非対応です。Piシリーズとはアーキテクチャが異なります |
購入前の確認事項
技適マーク
国内で無線LAN・Bluetooth機能を使用する機器には、技適(工事設計認証)の取得が必須です。国内認定リセラーの取り扱い製品には技適マークが表示されています。海外からの個人輸入品はマークが確認できない場合があるため、購入前に確認する必要があります。
購入先
国内の主な販売先は、Raspberry Pi社の認定リセラーであるスイッチサイエンスと秋月電子通商です。本稿の価格はスイッチサイエンスの数値であり、店舗ごとに価格・在庫は異なるため、購入前に複数店舗を比較することをおすすめします。
在庫の変動
確認時点で、Pi 5の2GB・4GB、Pi 4の1GB、Zero 2 Wは在庫切れでした。価格が判明していても購入可能とは限らないため、最新の在庫状況を必ず確認してください。
よくある質問
Q. Pi 3は現在も実用的ですか
軽量用途であれば実用範囲内です。Raspberry Pi社のCEOは、Pi 3Bが年間100万台近く出荷されていると述べています。ただし、スイッチサイエンスでは3B+が販売終了、3A+が売り切れの状態にあります。新規購入であればPi 4以降が現実的な選択肢になります。なお、Pi 1やPi 2のような古いモデルは、最新のDockerイメージに対応していないケースがあります。
Q. メモリ容量はどう決めるべきですか
ヘッドレス運用なら1GB、デスクトップ利用や複数サービスの並行稼働なら2~4GBが基準になります。8GB以上は、実際に重量級の用途がある場合に限定して検討すべきです。現在の価格体系では、余裕を見て容量を多く選ぶ判断はコスト効率が悪くなります。
Q. Pi 5とPi 4、どちらを選ぶべきですか
低コストでの導入ならPi 4の2GB(11,800円)かPi 5の1GB(9,900円)です。処理性能・SSD・AI用途を重視するならPi 5です。8GB構成同士であれば価格差は約2,000円しかないため、この価格帯ではPi 5を選ぶ根拠があります。
Q. PicoとPi 5の違いは何ですか
Pi 5はLinuxが動作するSBC(シングルボードコンピュータ)、Picoはファームウェアを書き込んで動作させるマイコンボードです。用途とアーキテクチャが根本的に異なります。
価格は今後下がりますか
Raspberyy Pi社はメモリ価格の沈静化後に値上げを撤回する方針を示していますが、時期は未定です。導入が急務であれば、価格下落を待たずメモリ容量を抑えた構成を選ぶのが現実的な判断になります。
まとめ
- 動作検証:Pi 5(1GB、9,900円)またはPi 4(2GB、11,880円)
- 学習、Pi-hole、軽量サーバー:Pi 4(2~4GB)
- デスクトップ代替:Pi 400(14,520円)
- 高負荷処理、SSD、AI:Pi 5(8GB、36,300円)。16GBは要件確認後に検討します
- 小型、IoT:Zero 2 W(在庫要確認)
- 組み込み制御:Pico 2(1,100円)
メモリ価格高騰下では、余裕を持たせたスペック選定はコスト効率を悪化させます。用途に対して必要十分なメモリ容量を見極めることが、現時点での最適な判断基準になります。
参考情報
- https://www.raspberrypi.com/news/a-new-3gb-raspberry-pi-4-for-83-75-and-more-memory-driven-price-increases/
- https://www.raspberrypi.com/news/more-memory-driven-price-rises/
- https://www.electronicsweekly.com/news/business/raspberrypi-price-hikes-2026-04/
- https://www.jeffgeerling.com/blog/2026/news-about-raspberry-pi-6-and-microcontroller-development/
- https://www.switch-science.com/collections/raspberry-pi
- https://www.switch-science.com/products/7600

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