目次
はじめに
現代のセキュリティ運用では、「脆弱性情報の取捨選択」や「リスク評価の優先順位付け」が重要な課題です。
IPA(情報処理推進機構)が公開した成果資料『脆弱性対応におけるリスク評価手法のまとめ ver1.1』では、複数の評価手法が整理されており、実務での活用を想定した内容となっています。
本記事では、主なリスク評価手法の概要を簡潔に紹介した上で、特に私が注目した「SSVC」の魅力を語り、最後に資料中で紹介されている活用事例について触れたいと思います。
主なリスク評価手法の概要
CVSS(Common Vulnerability Scoring System)
- 一般的な脆弱性スコアリング手法
- v3.1ではベーススコア・テンポラル・環境スコアが導入され、v4.0では脅威ベース指標や新たなメトリクスが追加
- 定量的な評価がしやすく、既に多くの製品で導入されている
SSVC(Stakehodlder-Specific Vulnerability Categorization)
- 決定木ベースの評価手法
- 安全性、公衆への影響、利用可能性、容易性、といった観点から「すぐ対応」「通常対応」などの判断を導く
- スコアではなく意思決定のフローを重視するのが特徴
EPSS(Exploit Prediction Scoring System)
- 脆弱性が今後悪用される確率を統計的に予測
- 短期的な攻撃可能性に焦点を当て、パッチ適用の優先順位付けに活用できる
KEV(Known Exploited Vulnerabilities)
- CISAが公開する既知の悪用済み脆弱性リスト
- 実際に攻撃に使われた脆弱性であるため、優先度は高い
私の視点:SSVCの「説明可能性」が魅力
脆弱性対応では、「なぜこの判断に至ったのか」を説明する必要があります。
SSVCのように決定木によって判断フローが可視化されている手法は、そうした説明責任を果たすうえで非常に有用です。
ブラックボックス的なスコアだけで判断せず、
- 公衆への影響
- 組織の安全性
- 利用可能性の広がり
など、判断に必要な要素を明示的に扱えるのがSSVCの強み。
この透明性こそが、私がSSVCに最も魅力を感じた理由です。
リスク評価手法の実例紹介
資料の公判では、架空の組織を想定したリスク評価のシナリオが紹介されています。
同一の脆弱性に対して各手法を適用することで、以下のような違いが可視化されていました。
- CVSSスコアが高い=すぐ対応?→実はEPSSでは悪用確率が低いケースもあり、「即時対応」とは限らない。
- SSVCでは、影響範囲や使用頻度をもとに「通常対応」「注意喚起のみ」などの柔軟な判断が可能。
このように、各手法の視点や得意な領域の違いを理解することが、現実的なリスク評価には不可欠だと実感しました。
おわりに:複数手法の組み合わせがカギ
本資料を通じて改めて感じたのは、「1つの指標で判断しないこと」の大切さ。
CVSS、SSVC、EPSS、KEVなどを組み合わせて立体的に判断することが、セキュリティ運用の現実的なアプローチだと感じました。
そして、なかでも説明責任を果たせるSSVCのようなツールは、現場での合意形成や判断の透明化に非常に役立つと実感。
今後もこうした評価手法を実務にうまく取り入れながら、自分自身の判断力も磨いていきたいと思います。
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