はじめに:JC-STAR制度に注目する理由
近年、製品やサービスのセキュリティ品質を「見える化」することが求められています。
その中で、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が推進するJC-STAR(Japan Cybersecurity – Security Target Assurance and Rating)は、企業が自らの製品・サービスのセキュリティ実装力を評価・公表できる制度として注目されています。
JC-STAR制度の概要
JC-STARは、製品やサービス単位で「セキュリティがきちんと作り込まれているかどうか」を評価する制度です。
認証レベルは★(スター)で表現され、評価が高まるごとに★の数が増えていく仕組みとなっています。
- 評価対象:ソフトウェア製品、サービス、組み込み機器など
- 評価軸:セキュリティ実装力(要件を満たすために組み込まれた技術的な対策)
- 実施主体:申請企業 + 評価機関(認定ラボ)
★1評価制度の役割と位置づけ
JC-STARの最も基本的な投球が「★1」です。これは、
– セキュリティに取り組み始めたばかりの企業でも、
– 技術的対策の初歩がしっかり組み込まれていれば、
制度上で正式に「評価された製品」として認定される仕組みです。
評価の敷居が高過ぎず、セキュリティ文化の視野を広げるための設計となっているのが印象的です。
国際動向との整合性:ISO/ENISAとJC-STAR
JC-STARは、国際標準のセキュリティ評価基準 ISO/IEC 15408(通称:Common Crteria)をベースに設計されています。
さらに今後は、
– 欧州ENISAが推進するSOG-IS(欧州セキュリティ評価制度)との整合性
– 国際相互認証に向けた信頼性の橋渡し制度
としての展開が期待されています。
この制度が定着すれば、日本の製品・サービスが海外展開する際にもセキュリティ評価の信頼性を持った状態で輸出できる可能性があります。
企業実務での活用イメージ
JC-STAR制度は、単なる官製評価にとどまりません。企業の現場では次のような場面で活用が見込まれます。
- 製品開発段階での設計品質担保
- 認証を得ることでのブランディグ効果(調達・販売での信頼獲得)
- 自社のセキュリティ実装状況の第三者評価
利用支援コンテンツの例
- 説明会資料(PDFリンク)
- ガイドライン・評価テンプレート(IPA公式サイトに掲載)
今後のスケジュールと制度の展望
2024年度~2025年度は、JC-STAR制度の普及フェーズと位置づけられています。
現在は★1評価を中心に取り組みが進められており、今後は以下のような展開が予定されています。
- 等級の拡充(★2~★4など)
- 参画企業や評価機関の増加
- 評価ガイドラインや支援ツールの充実
政府も普及のためのセミナーや支援策を展開しており、今後のアップデートからも目が離せません。
まとめ:制度理解が競争力につながる時代へ
JC-STAR制度は、日本発のセキュリティ評価制度として、
– 企業の「セキュリティ実装力」を見える化し、
– 国際市場での信頼獲得につなげ、
– セキュリティ文化の裾野を広げる
という多面的な価値を持っています。
実務者として制度の背景を正しく理解し、適切なタイミングでの評価取得や社内説明に役立てることが、今後のセキュリティ戦略の第一歩になるでしょう。
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